私たちは韓国で、ケイドロを広い場所や大人数でも遊びやすくするアプリを作っています。
日本のケイドロについて調べているうちに、少し不思議なことに気づきました。そこに書かれている遊び方が、私たちが子どものころ韓国で遊んでいたものと、ほとんど同じだったからです。
しかも、名前の縮め方までよく似ていました。
そして最近の韓国では、その遊びを大人たちがもう一度始めています。2025年の終わりごろから、20〜30代を中心に「경도」をやる人が増えました。
韓国では「경찰과 도둑」
読み方はキョンチャルグァ トドゥク。意味はそのまま「警察と泥棒」です。
- 警察チームと泥棒チームに分かれる
- 警察が泥棒を追いかけてタッチする
- つかまった泥棒は牢屋に入る
- 仲間がタッチすると出られる
ケイドロと、ほとんど同じです。
牢屋の決め方も同じです。ジャングルジムや滑り台、校庭の木を一本決めて「ここが牢屋」とするだけ。誰が見てもわかる場所なら何でもよかった。
助け方も同じです。つかまっている人が増えてくると、手をつないで鎖のように伸びていく。牢屋の前で待ち構えている警察をかわして、その列のいちばん端にタッチする。あの瞬間がいちばん盛り上がりました。
そして必ずもめました。牢屋のそばに警察がずっと立っているのはずるいんじゃないか、という話です。「番人はなし」と決めておく日もあれば、そのまま押し切られる日もありました。
縮め方まで同じだった
いちばん驚いたのは、ここです。
韓国でも、この遊びは縮めて呼ばれます。「경도(キョンド)」です。
경찰(警察)の「경」と、도둑(泥棒)の「도」をつないだ言葉です。
- ケイ(警察)+ ドロ(泥棒)= ケイドロ
- 경(警察)+ 도(泥棒)= 경도 캡션: ケイ+ドロ、경+도。どちらも警察が先に来る
言葉はまったく違うのに、作り方が同じでした。並び順も同じで、どちらも警察が先に来ます。
長い名前は短くなる、というだけの話かもしれません。それでも、海を挟んだ場所で同じ縮め方をしていたと知ったときは、少し不思議な感じがしました。
ローカルルールがあるのも同じだった
日本のケイドロに地域差があるように 日本のケイドロに地域差があるように、韓国も学校ごとにばらばらでした。
- 呼び方 - 「경찰과 도둑」「경도」「도둑잡기(泥棒つかまえ)」
- つかまえ方 - タッチだけでいいのか、つかまえたまま数を数えるのか
- 救出 - あり/なし
「10数える」「背中を5回たたく」 つかまえ方でもめるのも同じです。「今つかまえた」「まだ触ってない」で試合が止まる。日本で「10数える」「背中を5回たたく」と分かれていると読んだときは、同じことをしていたんだな、と思いました。
転校すると、その学校のルールを覚えなおすことになります。これも同じでした。
子どもの遊びを、今は大人がやっている
ここまでは子どものころの話です。ただ最近の韓国では、「경도」に少し新しい遊ばれ方が加わっています。
きっかけのひとつになったのが、당근마켓(タングンマーケット)です。日本でいうジモティーに近い地域アプリで、近所の人との中古取引や地域のやりとりに使われています。2025年の終わりごろから、その掲示板でも「경도やりませんか」という募集が増え、少しずつ広がっていきました。
実際、2025年12月には「경도」の検索数が前月の約670倍に増えたと報じられました。
やり方は素朴です。公園や漢江のほとりに集合して、警察と泥棒に分かれて走る。30人前後で、ほとんどが初対面。掲示板には場所と日時、持ち物、注意事項だけが書いてあります。
韓国のラッパー、イ・ヨンジ(Lee Young Ji)が参加者を募集したときには、約10万人が応募して、そのうち100人が選ばれました。韓国の国立民俗博物館のウェブマガジンでも取り上げられるほどです。
ソウルで11回開き、500人以上を集めた主催者もいます。その人は、初めて参加したときに久しぶりに「健康的なドーパミン」を感じて、この楽しさをもっと多くの人と分かち合いたかったことが、始めたきっかけだったと話していました。
調べてみると、日本でも似たことが起きているようです。ジモティーで、大人のケイドロの参加者募集を見かけました。
広くすると、誰にも会わなくなる
私たちが作っているアプリも、この「경찰과 도둑」がもとになっています。開発を始めたのは、今のように大人の間で「경도」が広がるよりも前のことでした。
子どものころは、校庭や近所の公園で遊んでいました。それを大人になって、もっと広い場所で、もっと大人数でやったらどうなるだろう。そこからアプリ作りが始まりました。
ただ、広くすると困ることが出てきます。いちばん大きいのは、そもそも誰にも会わないことです。走っているだけで時間が過ぎていきます。
遊ぶ範囲も、地図の上で先に決めておけます そこで、泥棒の位置を一定の間隔で公開することにしました。ずっと見えていたら追いかけっこになりませんが、まったく見えないと出会えない。その間をとった形です。遊ぶ範囲も、地図の上で先に決めておけます。
日本でこの遊びが「ケイドロ」と呼ばれていると知って、日本語版でもその名前をそのまま使うことにしました。韓国の「경도」と同じく、警察を先に置いて縮めた名前だったことにも、不思議な親近感がありました。
韓国では「경도」、日本では「ケイドロ」。呼び方は違っても、子どものころ夢中になった理由は、案外同じなのかもしれません。